言葉ログ#12 "ことばというものにひとは使われているのかもしれません。"
AIを語る文脈でも、「ヒトというのはスーパーAIをつくるためだけに誕生した存在なのでは」という専門家がいたりします。その他にも、小麦やとうもろこしなどの農作物はヒトという存在のため一気に地球表面に広がりましたが、「小麦はその種を拡大するためにヒトを利用した」ということをいう有識者もいます。
ことばについても、同じじゃないかと。
ことばはツールだとよくいわれます。ひとがことばというものを使うのだ、と。けれども、事はむしろ逆で、ことばというものにひとは使われているのかもしれません。ことばとはなにか、ということを一生懸命考えるときに、わたしたちがことばを使ってそれをやっている以上、わたしたちは囚われの身に過ぎないのではないか。
ことばの外に出ることがわたしたちには不可能で、それを外から眺めることがどうしてもできないのだとすれば、頼みはコンピューターにある、というのは特集の冒頭で理論物理学者のマイケル・ニールセンの語るとおりかもしれず、そうまでして、ことばというものの秘密に迫りたいとわたしたちが考えるのは、そこにわたしたちが生きる世界のすべてがきっと含まれているからに違いないのです。(ことばに囚われて)p253