一睡の夢 一期の栄華 一盃の酒

本の中だったり、映画の中だったりで出てくる言葉を定期的に紹介したいと思います。他にも好きなことを書きます。

言葉ログ#5 "もし世の終わりに裁かれるなら、僕が本当の人生を生きてきたかどうかで判断してほしい"

夢は?と聞かれたとき、職業で答えるしかなかったりする。

間違ってはないんだけど、追うべきはもっと信条に近いものなんじゃないかと思う。

脳手術の前の晩、僕は死について考えた。僕は自分の一番重要な価値観とは何かを探り、自分に問うてみた。

もし死ぬのであれば、徹底抗戦して死ぬのか、それとも静かに降伏するのか。

自分のどんな面を人に見せて死にたいのか。

自分に満足しているのか。これまで人生で何をしてきたのか。

僕は本質的には良い人間だと思う。もちろんもっと良くもなれたが。でもそれと同時に、癌はそんなこと全く気にしないこともわかっていた。

 

僕は何を信じているのだろう。僕はあまり祈ったことはない。強く希望したり、強く願ったりしたことはあったけれど、祈りはしなかった。

子供のころに、宗教に関しては疑問を抱くようになっていたが、いくつかはっきりとした信念を持っている。簡単にいえば、僕は、自分が良い人間になる責任があると信じているし、勇敢で正直で勤勉で高潔な人間になろうと努力もしてきた。その上、家族に優しく、友人に誠実なら、そして社会にお返しをし、嘘をついたりだましたり盗んだりしていないなら、それで十分だと思った。

もし世の終わりに裁かれるなら、僕が本当の人生を生きてきたかどうかで判断してほしい。ある書物を信じているかどうかや、洗礼を受けているかどうかではなく。もし本当に「神」がいるなら、僕の人生の終わりに、「でもお前はクリスチャンではなかったではないか。だから地獄へ行くのだ」なんていうこと入ってほしくない。もしそう言われたら、僕はこう答える。

「どうぞご勝手に」

ランス・アームストロング安次嶺佳子訳 「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」講談社

 

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく (講談社文庫)